東京都知事の石原慎太郎氏と、小説家・天台宗の尼僧である、瀬戸内寂聴さんとの往復随筆という形式の本です。
好奇心旺盛で情熱的な2人が交わす手紙の中では、七十、八十歳を過ぎたところで人生を振り返っての思い出話もありますが、それでもどことなく守りなんかではなく攻めの姿勢で今もこれからも楽しみを感じさせるたくましさもありました。
年を重ねることは「老い」ではなく「成長」だと誇らしげに語る様子はまだ2人の半分の年齢にも達していない私にとってはとても興味深く、好きなこと興味のあることを深く追求していく中で人生は深みを増していくものだなと思いました。
不器用さの中に人間味が感じられ、昔の、いわゆる「日本人」の特徴というものを久しぶりに目の当たりにしたような気がします。
本の中で、天竜二俣の画家、秋野不矩さんが出てきます。
彼女は50歳を過ぎてインドに渡り、インドの日常の風景を描き、それが今では彼女の代表作ともなっています。
私も数年前と昨年、今年も行きましたが、二俣にある美術館では、まるで若い男性の画家が描いたのでは?と思わせるようなスケールの大きな力強いインドの風景を描いた絵が飾られていて、美術館の建物の形も相乗効果でとても気分よく鑑賞させていただきました。
彼女もやはり、年齢を言い訳にしない、素敵な情熱をもった1人だと思います。
情熱とは、燃やせば燃やすほど沸いてくる魔法のエネルギーだと、別の本で読んだことがありますが、時間を忘れて没頭できるほどのことに出逢い、そこへ一心に情熱を注げることはとても素敵なことです。
振り返るのはまだまだ何十年も先でいいのかもしれないですね